公正証書作成において大事なことは、
公正証書の書き方と公証役場選びだと言われています。
公正証書は法的効力を持つ立派な契約書ですが、必ずしも絶対安心というわけではないのです。公正証書には下記のような落とし穴がたくさんありますので、強制執行で財産差し押さえをする事まで十分に想定して良く調べてから慎重に作成してほしいです。
私は節約したくて自分たちで作成依頼をしましたが、不安でしたら費用はかかりますが行政書士や弁護士などのプロに頼むと安心です。
あと、公証人は法律のプロですが離婚の専門家ではありません。
公証人によっては、同じ事でも向こうから教えてくれたりこちらから聞かなければ教えてくれなかったり、当たりハズレがあるかもしれません。
しっかりとした公正証書を作成できるように、事前に知識を蓄えてから作成にとりかかってください。
公正証書を作成する時の注意点
◆「強制執行認諾」の文面の記載と「交付送達」を両方やってくれる公証役場を探す
強制執行をするにあたり、この二つは大変重要です。
しかし公証役場によってはやってくれないところもあるのだとか。
つい家から近い公証役場を選びたくなりますが、「強制執行認諾の文面の記載」と「交付送達」を両方依頼できるかどうか、事前に確認をしてください。
「強制執行認諾の文面の記載」と「交付送達」については下記に詳しく書いています。
◆「強制執行認諾」の文言を必ず記載
この文言が記載されていないと、せっかく公正証書を作っても強制執行力を持ちませんので、必ず記載してもらうように公証人に依頼してください。
私の場合は、私から依頼する前に公証人のほうから「強制執行にはこの文面が必要ですよ」、と作成段階で提案してくれましたが、もし旦那さんが主導で公証人とやりとりして原案を作成している場合は特に、この文言が記載されているか、最後に省かれていないかを必ずチェックしてください。
◆「交付送達」をついでにおこなっておく!
公正証書を受け取る時に同時におこなっておいたほうがいい交付送達。
強制執行の手続きをとる時に裁判所に提出する必要書類の一つに「送達証明書」というものがあります。
これは、「相手に公正証書の謄本がちゃんと届いていますよ」という事を証明する書類で、公証役場から相手方に謄本を届けてもらい、相手がそれを受取ってから初めて取得できる書類です。
これを公正証書受け取りの時についでにやってしまうのです。その手続きが交付送達です。
公正証書受け取りの時に交付送達しなかったとして、いざ強制執行をしようとして公証役場から謄本を相手方に届けてもらった時に、相手に強制執行を勘づかれて受け取りを拒否されたり、そもそも相手が転居していたりして住所が分からない可能性もありますよね。
その場合は送達ができない事になります。
(受取拒否の場合、他の送達方法として「付郵便送達」という方法もありますが、本人または代理人が相手方の住所へ出向いて現地調査をしないといけなかったりと、とても面倒なのです。遠方の場合は交通費かけてまで行くべきか悩みますよね・・・。)
そういう事態を避けるために、公正証書を受け取る時点でこの交付送達をしておいたほうがいい、という事です。交付送達費用は少しかかりますが、手渡しなので郵送費用はかからずに済みます。
これはすべての公証役場でやってくれるとは限らないようなので、公正証書作成依頼をする前の初めの段階で交付送達の手続きができるかどうか聞いてみてください。
私は当時は調査不足で、この交付送達という手続きを知らなかったので送達証明書は取得していませんが、知っていたら万が一の時のために必ず依頼していたと思います。
債務者側が代理人をたてている場合は、債務者本人が直接受け取る事ができないので交付送達はできません。しかしその場合でも公正証書作成後、早めに公証役場に依頼して郵送で送達してもらったほうが受け取り拒否される可能性が少なく安心です。作成してから時間がたてばたつほど、転居や受け取り拒否などのリスクが増すと思いますので。
◆「執行文付与」も可能なら済ませておく
上記の「交付送達」が無事にできたらその後「執行文付与」も済ませておきたいところです。
この「執行文」も強制執行の時の必要書類の一つです。
執行文付与の手続きは債権者(養育費をもらう側)だけで勝手にできる事ですが、強制執行をしようと思ってからまた公証役場に行って依頼するよりは、公正証書作成と同時に手続きできればいざという時に手間が省けます。
事前に公証役場に、交付送達とセットで執行文付与も依頼できるか確認しておきましょう。
追記:大学の進学を条件に大学費用を払うなど、何かの条件が設定されている場合の養育費を強制執行したい場合は、その条件が成就したことの証明となる文書を公証役場に提出したうえで「条件成就執行文」という執行文があらたに必要となります。これは条件の成就が確認されて初めてもらうことができます。
◆養育費など金銭が絡む文面は、金額と支払い期日を明確に記載する
例えば「〇〇円を支払う約束をする」などという曖昧な書き方はしないことです。
「いついつまでに〇〇円をこの口座に振り込む」というふうにはっきり書かないと、このような曖昧な書き方では強制執行ができなくなる可能性があります。
私の場合は「大学入学時に〇〇万円を支払う」と公証人に伝えたら、大学入学時という曖昧な表現ではなく、「大学に入学する年の〇月末までに」という具体的な書き方にするように訂正されました。支払いの期日がはっきりしていないとダメだという事でした。
他にも振り込んでもらう銀行名・支店名・口座番号もはっきり記載しました。
◆住所や連絡先が変わった時は相手方に連絡する旨を記載しておく
これに関しては法的効力はありませんが、約束事として一応載せておくべきかと思います。
守られるかどうかは相手次第ですが(-_-;)
強制執行するにあたって「送達証明書」を送付する場合(公正証書受け取り時に交付送達をしていない場合)や、相手の住民票をとる時に、相手の住所を知っておいたほうがスムーズにいくからです。
◆債権者が正本を受け取り、保管しておく事
債権者とは養育費等を受け取る側で、たいていは妻になると思います。
強制執行するとなった時、謄本ではなく正本が必要となります。
普通は公証人から債権者に正本、債務者に謄本が手渡されますが、家の中で取り違えたりしないように気を付けてください。
公正証書を作っても強制執行できない場合もある
◇相手に財産がなければそもそも取れるものがない(>_<)
強制執行しようとした時に、相手が無職や病気療養中などで貯金無し・収入も無しで取れるものが何もない場合、強制執行をかけても残念ながら効果がないですね(;_;)
◇相手の住所や差し押さえする財産が把握できていない
いざ未払いになって強制執行しようとした時に、相手が引っ越していて住所が分からない、となれば強制執行しようにもできません。戸籍や住民票を追っかけて探していく方法もあるようですがとても面倒です。
住所についての対策としては、離婚後も定期的に連絡を取り合える関係を維持し、子どもから相手の家に手紙を送らす習慣をつけるなど、相手の住所を常に把握しておける環境作りも大事かと思います。
また財産については、転職していて職場がわからない、相手の銀行口座も知らないとなれば、財産差し押さえをしたくても差し押さえるものが分からないので、裁判所も何もしようがありません。
相手の自宅前から尾行して職場を突き止めたり、探偵や弁護士を雇えば財産の情報を得られる可能性もありますが、その分多くの費用や時間、労力がかかります。
子どもより自分優先な人なら、強制執行を恐れて転職したり行方をくらませたりする可能性も大いにありますよね。自分自身も仕事や育児家事で忙しい時に強制執行という面倒な手続きをするほどの余裕がないかもしれません。最悪こうなったら泣き寝入りしてしまうかも・・・と思うととても悔しいですが。
でも実際には、相手の給与などを差し押さえて強制執行に成功している人は何人もいます。万が一未払いになった時に取り立てられる可能性を残しておくべく、離婚時にはきっちり公正証書を作成してほしいです。
◇相手の財産【職場や預貯金口座、不動産等】は離婚前に調べておく
もしもの時のために相手の職場の名刺や相手名義の通帳・キャッシュカード、生命保険証書などの写メをこっそり撮っておくなどして、職場の住所や預金口座の銀行名・支店名を知っておくと安心です。
差し押さえできそうな物は離婚前から調べられる限り調べておきましょう。
マイナンバーなども念のためメモしておきましょう。
そこまでしても、強制執行の手続きが無駄になってしまう事もあり得ます。
・相手の口座を差し押さえたが残高がなかった
・または口座を解約していた
・相手が転職していて給与差し押さえができなかった
・給与差し押さえに成功したがその後相手がすぐ退職してしまった
相手がサラリーマンや公務員ではなく自営業の場合は、給与自体がないので給与差し押さえはできないとなると、強制執行は難しくなるかもしれませんね。
いかに相手の財産を把握できるかが強制執行の成功のポイントだと思うので、離婚前から相手の財産の情報を探っておくことをおすすめします。
中には相手方の親を連帯保証人にする旨を公正証書に記述する場合(その場合保証人も公正役場に行かないといけない)もあるそうです。
私はそこまでは考えませんでしたが、少しでも未払いの可能性を下げるための一つの手かもしれませんね。
※2020年5月より民事執行法が改正され、相手の財産が知りやすくなりました。
これにより公正証書の効果も高まります。
詳しい情報は下記の記事にまとめています。
▶▶養育費未払いをなくそう!令和2年より民事執行法が改正
※私は法律家でも何でもなく、自分の調べに調べた情報をもとに集約して記事を書いていますので、あくまでも参考程度としてください。いざ公正証書を作成するとなった時は、ご自身でも納得いくまで調べて準備を整えたうえで作成して下さい!
コメントを残す